◆音冠◆

今まで私が歩んできた道は決して間違っていないと、私は今でも思っている。

間違ってなんかいない。

ただ、人より少し遠回りをしただけのこと。

遠回りをして、皆に少しばかり遅れをとったけど、とても大事なことを遠回りした道の中にいっぱい落ちていた。
いくつ拾えたかな?
そしていくつ見逃したかな?

過去を振り返れば実に恵まれない状態だった。
恵まれていたのは、健康な身体と、親と・・・。

友達や人間関係には一切恵まれていなかった私。
元々気が弱かったこともあったから、中一の頃は一方的に苛められていた。
徹底的に、とことん・・・・。

中二の頃はそれが怖くて荒れていた。
何もかもが怖くて、小さな壁でも退いていた。

今は、少しずつ向き合えていると思う。
自分に。
向き合っている。だからリストカットなんて馬鹿な真似はしなくなった。
でも、これから夏ですよね。
少し不安なんです。

夏に一日一日近づく度に、ふと左腕を見て、去年の腕の状態を重ね合わせていた。
今は少し白い肌だけが見えていた。
去年は・・・真っ赤な線がいくつもあって、今よりか黒かったはずの肌がとても白く見えた。
深く切ったのもあったし、浅く切ったのもあった。

それを見て、恐怖と同時に快感も得ていた。

「大丈夫」。
この言葉を自分に言い聞かせ、今まで生きてきた。

大丈夫だよね。自分。